May 8, 2017

ゲストハウス等の調査および考察


イメージ写真は、旅人役を演じてもらったとき[★1]に撮影した染色家の小倉さん

 
こんにちは、江別市議会議員の堀です。みなさまは、ゴールデンウィークをいかがお過ごしでしたか?わたしのゴールデンウィークは、調査を続けていた「ゲストハウス」のことについて、江別市のまちづくりに関わる方々と情報共有するために文書化を進めていました。そこで思ったのは、お会いしたことがない方にも関心がある方がいるのではないかと。ということで、ウェブサイトにも更新することにしました。

わたしは、江別市の活性化の突破口は、観光と不動産にあるのではないか。観光による不動産活用の主役は宿で、とりわけ不動産のなかでも、空き家を課題から資源にするという視点では、既存施設をリノベーションして供用する小規模な宿の代表例である「ゲストハウス」が鍵なのではないかと考えおります。この考察が、江別市の活性化、すなわち雇用創出と人材誘致の好循環につながることを願うものです。

 
 

: 1. 調査目的

 
本調査の目的は、持続可能なまちづくりを具体的に推進していくための突破口を創造することが目的である。継続性を担保する地域経済と投資性を担保する地域文化の活性化のためには、カルチャーとビジネスが共存するプロジェクトが必要である。人口減少時代の地域復興のためには、外部から集客し、延べ人数を増やすこと。移住見込み層に興味喚起する良質なイメージ形成と、効果的な情報伝達を行なうこと。空き家を利用を促進し、外部の人にも活用してもらうことが必要がある。

これら必要要素を包摂する「観光 ✕ 不動産」事業のなか、もっとも皮切りになる事業手法として最適な「ゲストハウス」について調査を行なった。にぎわいではなく、なりわいを。イベントのような一過性のキャンペーンではなく、長期的な取り組みによる重層的なブランディングこそ、地域の持続可能性をもたらすと考えるものである。

 
 

: 2. 調査概要

 
– 調査期間:2002年〜2017年
– 調査件数:72件(記録が残っているもののみ)

 
 

: 3. ゲストハウスの定義

 
本調査では、相部屋素泊まりが中心であり、トイレやシャワーなどが共用であり、運営者や旅行者との交流を選択できる設計がなされている廉価な宿泊施設と定義する。

 
 

: 4. ゲストハウスの変遷

 
◎黎明期
主に、外国人バックパッカー向け。ユースホステル的な、宿泊者同士の距離感の近さが強い傾向。リノベーションというよりは、そのまま使っているという段階のものが主流だった。

◎発展期
ゲストハウスの認知度が高まるとともに、国内旅行者の利用が増加、京都と沖縄を中心に立地していたゲストハウスが、東京で急増(東京のゲストハウスは、当時シェアハウスを指していた)しはじめ競争が激化。古民家改装、BAR併設など、ゲストハウスに高いクオリティが求められるように。さらには、地方にもブームが飛び火し、日本全国にゲストハウスが広まった。

◎成熟期Aタイプ
一部の愛好者ではなく、合理的かつ高感度な旅を嗜好する層にも広がり、ビジネスとして成立するゲストハウスが増えはじめ大規模化。本格的なリノベーション、高利回りの不動産投資の手段としての認識が生まれ始めている。

◎成熟期Bタイプ
観光誘客や地域振興の手段として、滞在時間の長さや人の流れをつくる拠点性、明快かつ安定したビジネスモデルによる収益性、地域の魅力や文化を伝達できる媒体性などの高い機能を持ったゲストハウスが注目される。これが非マス傾向で、旅に信憑性を求めている旅行者ニーズと合致。こうしたまちづくり系のゲストハウスは、補助金やクラウドファンディングなどの多様な資金調達をする傾向にある。さらには、泊まれる本屋、泊まれる図書館、泊まれる美術館など、宿の拠点性や収益性や媒体性と異分野の相乗効果を狙った宿など、宿泊行為の多機能化と二毛作化が進んでいる。

 
 

: 5. これからのゲストハウスについての考察

 
◎予測
ゲストハウスは、転換期を迎える。Aタイプは、大都市部の空きテナント、有名観光地の廃業したホテルを活用し、チェーン展開が進むだろう。Bタイプは、「観光ではない旅」「旅するような暮らし」という指向にシフトする。以上を鑑み、江別市で実施すべき方向性は<Bタイプ>と分析した。

◎形態
宿泊者の「稀で信憑性のある旅」「自由で自分だけの暮らし」という「真のいまだけ/ここだけ/あなただけ」というニーズに対応すると同時に、宿泊者という外部性をまちづくりに活かす「ツーリスト・イン・レジデンス」[★2]という発想に基づいたゲストハウス。

◎プログラム
WEB非公開。興味がある方は、[ hori@ebetsu2.net ]までご連絡ください。

◎交流
WEB非公開。興味がある方は、[ hori@ebetsu2.net ]までご連絡ください。

◎施設
WEB非公開。興味がある方は、[ hori@ebetsu2.net ]までご連絡ください。

 
 

以上、現段階の調査でした。これから考えないといけないのが、最適な行政の関与手法です。

まちの規模によって、その最適な手法は異なると思います。江別の場合、ホテルなどの大きな宿泊施設を建設し、<観光需要の低下 → 除却コスト>というリスクを抱えるより、増加の予測される空き家等を活用し、小さくて特徴的な宿泊施設が複数ある方がマッチしているのかなと。なぜならその方が、しなやかで先の読めない時代には強いうえに、空き家という地域課題を地域資源に変え、経済だけでなく文化の活性にもなりうるので、空き家活用も含めインセンティブによって誘導することが適しているのではないかと現段階では感じています。これからはそうしたインセンティブ設計や誘導手法の調査にシフトし、民泊等の動きなども見据えながら、政策提案につなげていきたいと思います。

 
 


UNTAPPED HOSTEL(北海道札幌市)。全般的にクオリティが高く、特に開放感あふれる二段ベッドが秀逸。


MADO(愛知県名古屋市)。染物のまち・有松にあり、宿場町の景観に馴染むすてきな雰囲気。


西アサヒ(愛知県名古屋市)。円頓寺商店街の廃業した老舗名物喫茶店を改装したゲストハウスで、名物「たまごサンド」も継承。


Kumagusuku(京都府京都市)。ゲストハウスではないが、ギャラリーのなかに泊まるという古民家改装による宿で、とにかく建築空間がすばらしい。


RICO(和歌山県和歌山市)。集合住宅の1フロアを改装してつくられた、珍しい空間を活用したゲストハウス。


WEEK神山(徳島県神山町)。ドミトリーであるが、ゲストハウスとはまた異なるテイストの町民設民営の宿泊施設。


fan! Sports Bar & HOSTEL(宮崎県日南市)。活性化が進む油津商店街にある、学生による運営によるゲストハウス。江別に参考となる要素が多い。


TAGIRI HOTEL(宮崎県串間市)。ゲストハウスではないが、古い温泉民宿のリノベーションによる宿で、ロケーションも温泉もすべてが癒やされる。


鉄輪柳屋(大分県別府市)。ゲストハウスではないが、湯治貸間を改装した宿で、鉄輪名物・地獄蒸しによる自炊も可能で、湯治のハードルを下げるすばらしい宿。


Nui.(東京都台東区)。BAR併設のさきがけである toco.と同じく、現在のゲストハウスシーンを牽引する株式会社Backpackers’Japanによる経営。


Tanga Table(福岡県北九州市)。すぐとなりにある旦過市場で食材を買い、共有キッチンで調理して食事をすることで暮らしている気分に。リノベーションの聖地・小倉にあるゲストハウス。


アスカゲストハウス(奈良県明日香村)。「日本はじまりの地」とも言われる飛鳥京があった土地にあるだけあり、ふつうとは違うまちの雰囲気を宿泊することによって一日じゅう体験できる。

 
 


★1:イメージポスターづくりにご協力いただきました。



★2:わたしによる造語で、アーティスト・イン・レジデンスの考え方をもとに作成しました。アーティスト・イン・レジデンスと大きく違うのは、新たにプロフェッショナルを招聘するわけでなく、宿泊者にその機能を担ってもらうので、助成金や公的予算(税金)に依存せず事業を実施できること。体験観光と大きく違うのは、オプショナルツアーという選択条件ではなく、宿泊という必須条件においてプログラムを提供することから、安定した収益性を確保しうるので、行政に依存せず事業を実施可能で、さらには宿泊事業で継続性を確保するので、プログラム体験者に無料ないし、逆有料(報酬を払う)での提供可能であることです。詳しくは、[ hori@ebetsu2.net ]までご連絡ください。

 
 
horidot

編集者議員・堀直人
http://ebetsu2.net/

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