Nov 10, 2016

もしも、ボクが地域おこし協力隊担当職員だったなら…

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電源があっても、WiFiがあってもつくれない、この野幌公民館の快適さ

 

こんにちは、江別市議会議員の堀です。今日は消防団の研修がはじまるまでのあいだ、野幌公民館でブログを書いています。野幌公民館のノマドワーク環境、最高です…!

さて、前回で終わるはずだった地域おこし協力隊制度の記事。隊員さんの観点だけでなく、職員さんの観点でも書かないと片手落ちかなと勝手に思えて来たので、唐突に最終回を延期しちゃったわけですが、もしボクが地域おこし協力隊担当職員だったなら…とにかくブログでdisられてバズるとか、協力隊あるあるNeverまとめに登場し炎上とか、それがとにかくとにかくまじで怖いです(笑。いや、笑いごとじゃないですよね。ネットとかSNSとか、マジ怖いですよ…そのように、ネットで叩かれないためにという意味でも、アタシが協力隊担当職員だったならという設定で考察してみたいと思います。

 
 

: 1. 協力隊の3年後を常に考える

 
ボクがもし地域おこし協力隊担当職員だったら…まず忘れちゃいけないのが、自分と違って3年後の職に見当がつかない状況で、自分たちの地域にやってきてくれていることだなあと思うんです。その大前提を把握したうえで、行政として戦略的に制度を活用していこっかなと。人としての想像力と、プロとして遂行力。冷静と情熱のあいだにいる気分です。

戦略的にと言いましたが、まず定住してもらえれば人口は増えますね(市民税アップ)。これで起業してもらえれば、事業者が増えますね(法人市民税アップ)。なんで、まあ運が良かったら定住とか起業とかしてくれるといいなーとか、気合で定住!起業!だー!と掛け声ばかりの根性論とかになるかもしれませんが、そうではなく仕組みにしなければ、それは戦略ではなく方針なわけです。方針に質量を肉付けし、戦略にするにはどうしたらいいか考える。ミッションは、任期中の取組の最大化と任期終了後の取組の発展。この双方一体的な仕組み化です。

そのための取組は、募集の段階からはじまります。募集内容は、協力隊としての活動内容の具体性(理由は後述します)よりも、3年後のキャリアパスが明確にイメージできるかどうかのほうが重要じゃないかなと。起業(新規就農なども含む)でしたら、活動するなかからビジネスモデルを構築していけるような活動分野である必要がありますし、必ずしも起業である必要はないでしょうから、3年後は「◯◯(観光協会やまちづくり会社というような、半公的機関みたいなところが一般的)という組織への就職=形態を変えて公的に雇用」(試用期間パターン)という次の就職への展望でもいいと思います。いずれにしても、地域おこし協力隊に就職するのではなく、地域に就村するわけですから、こうした質的なビジョンがなかったり、この活動内容で起業とかどういうビジネスやねん!みたいな筋悪な計画だと、3年間の契約社員(契約更新なし)になってしまい、「仕組みの構築」という目標を達成できません。

募集内容は、3年間の、そしてその後の発展を動機づけるための計画です。その計画に沿って、どの媒体で、どういうトーンで募集するのかという、今度は募集方法によってキュレーションを行なうことになります。つまり募集は、多くの人に応募して欲しいという「入口」のところに気を取られがちですが、3年後の任期終了後にどうしなければいけないかという、実際は「出口」への戦略を組み立てる場面なんだと思います。

起業で言えば、西粟倉ではじまったローカルベンチャースクールなんかは、協力隊という制度をハックした起業家養成プログラムというように、戦略(方針の質量)がはっきりしてるので、募集内容も募集方法も澱みがありません。江別市の場合であれば、起業だけでなく、Uターンの仕組みとして協力隊制度を活用するのもいいのかなと思うんですよね。なぜなら起業しなければ雇用がない地域ではないので、3年間は就職活動期間にしてもOKというわけです。Uターンのいいところは、何も地域のことを知らないし、知人もまったくいないという状況ではなく、そういう意味ではゼロからのスタートではなく、一方で一度まちを出てるので、客観的に故郷を見ることができる、つまりハイブリット人材と言えます。このように、自覚的かつ意図的に制度を活用するという態度も、戦略的な業務の遂行には必要であることを心得ます。

採用後は募集内容という計画に、隊員さんの個別性という魂を込めて、計画を取組に昇華していきます。ただし、計画は具現化のためのアタリであって、流動的に形を変えて現実をつくっていかないと、単なる形式美になってしまい本末転倒です。計画をつくるにあたって、計画に愛着が出てしまい、担当のやりたいようにやらないよう、エゴからの決別をするのも重要ですよね…(そしてそれがエゴなのか、相手のことを思ってのことなのか、この見極めも難しいですよね…

質の次に、量についてですが、何人採用するのかというのも、大事な部分です。なぜなら、任期中の取組の継続性においても、任期終了後に担い手を増加させ続けるという意味でも、毎年ごと切れ目なく採用しなければ仕組み化しないからです。隊員さんを常にあたらしく迎え、同時に地域へと巣立っていく活発な機関、精度の高い装置として、持続可能なメカニズムを構築していくことが目指すところです。

 
 

: 2. 活動環境を擦り合わせる

 
前項で募集内容は、活動の具体性より、3年後のキャリアパスがイメージできることが大事と書きました。何故か。それは、隊員の方によって、活動しやすい環境が違うからです。隊員の方が活動しやすい環境をつくり、地域協力活動を最大化することで、地域課題を解決(行政目標を達成)するという好循環をつくることが肝要。よって、協力隊の活動環境を整備すること、担当職員の仕事はこれに尽きます。

各地の協力隊の方々のブログを見ていても、詳細に活動が決まっているのが良かった方、自由に活動できるのが良かった方がいます。裏を返せば、行政がガチガチに決めた活動内容を押し付けることへの批判、ノープランで放置状態であることへの批判があり、この批判は双方真逆なことであるということです。

では、あまりガチガチに決めすぎず、かといって放置にならない程度にプランニングすればいいのか。ボクだったら、そうは思いません。確かにバランスのいい受入体制は無難ですし、行政として大方針や仮定の計画とそれを運用する戦略は持つべきですが、それをどのくらいの質量で適応させるか否かの定量的・定性的判断は、協力隊個々の特徴を理解してから確立するほうが効果的であると言えます。マーケティング的に言うとすれば、行政のプロダクトアウト(身内目線)ではなく、隊員特性から見たマーケットイン(相手目線)で進めるべきです。

活動内容と隊員特性のマッチング、ここで不一致が生まれてしまうと、なかなかうまくいきません。加えて、活動内容と地域事情。あるいは、隊員特性と地域事情。これらのマッチングも重要であり、刻一刻と変化する環境に適応しながら地域協力活動を行なうには、常に折り合いながら、摺り合わせながら活動内容を編集する必要があります。こうしたマネジメント機能も、担当職員の仕事。協力隊の活動が最初でつまづかないように、地域の方(特にすでに地域おこしを行なっている方)と接点が生まれるような状況を設計したり、そういう状況が存在しうる場に連れて行ったり、その他さまざまな情報を提供したりと…特に最初のころは、地域協力活動を協力隊に丸投げできませんね(こうした様子を想像すると、反対にマネジメントの必要性が低下したときの寂しさも、ひとしおでしょうね…

 
 

: 3. 行政にはできないことをしてもらう

 
行政って、ほんといずいなあと職員さんに同情してしまうことがよくあるのですが、この行政のやりにくさを、よそからわがまちのために来てくれた協力隊という正義、治外法権的な存在であれば無効化できるやもと、ボクが担当職員だったらほくそ笑みますよね(腹黒。その名も、協力隊印籠化作戦です。そんな可能性を秘めた協力隊を、行政職員のように扱うなんてもったいなすぎるんですけど、ネット上にはそんな事例が散見されます…もったいなあ…(でも、それだけ業務が切羽詰まってるということの証左なのかもしれませんね…

行政にできないこと、それってなんだろうと突き詰めると、根本的には「失敗と区別」なんだろうと思います。何故か。それは、税金という他人のお金を預かって事業を行なうのが行政だからです。わたしは、この時代の転換期において、行政であってもあたらしいことに挑戦する必要があり、そのためには失敗がつきものだと思っています。次に生かされれば失敗しても構わないので、スピード感を持って取組を推進していかなければならない時代だと思っています。しかしそのことはまだ、地域社会のなかでオーソライズされてはいないとも感じます。たまに、「スピーティに、かつ失敗は認めない」みたいな無茶なことを言う人がいますが、こうした株主のもと事業を行なうのは酷です。よって、失敗しないように、慎重を重ねて取組を進めなければならない行政が置かれた環境が、そこにはあります。時代の変化に対応ぜねばならない状況と、変わらない社会の軋轢の真っ只中に、行政はあるのです。

公平公正に事務を執行しなければならないのも、行政です。一方で、地域間競争が激化し、行政であっても差別化やマーケティングという名の区別が迫られる時代です。またここにも大きく矛盾が口を開けており、行政には難しい判断が求められます。この局面で、最も効果的ではない「どっちつかず」という判断をしてしまうのも、当事者であることを想像すれば、わからなくもないのです。

行政は、どちらに進むべきか。しかしそんなことを議論していたり、頭を悩ませていたりしていても、ただただ時間は通りすぎていくだけなので、ここは根本的な解決とは言えないのですが、協力隊には「次につながる失敗」と「正しいえこひいき」を大いにやってもらおう、そう、われわれの代わりに…とボクが担当なら考えるはずです。そのことこそ、もしかしたら時代に即した行政の進むべき道、あたらしい公のあり方、そして21世紀の地域社会モデルを照らしてくれるのかもしれない…そんな希望を胸に秘めながら業務に取り組むであろうと想像すると、とても協力隊担当職員はやりがいのある仕事だなあと思いました。

 
 
以上、もしも、ボクが地域おこし協力隊担当職員だったならの巻でした。

地域おこし協力隊にとって、担当職員は編集者です。地域おこし協力隊という作家が仕事のしやすい環境をつくり、その作家の仕事によって目標を達成する、それが担当職員の仕事です。行政における目標、それは市民福祉の向上。協力隊活動の最大化と、地域課題の解決(政策目標の達成)の両立および好循環創出が、この地域おこし協力隊制度の目指すところです。そうすれば、協力隊は市役所から地域に旅立ち、担当もまた異動になりますが、この好循環を生み出すメカニズムは残り続け、あたらしい隊員と職員が再び二人三脚で仕組みを活用し、やがて価値創出の担い手が地域に広がっていく装置へと、この地域おこし協力隊の事業を育てることができうるのです。

北海道庁で制作されたマニュアルに、協力隊担当職員さんのインタビューが掲載されているのですが、興味深い視点が2つありました。まず1つ目は、仕組みづくりのところに「条例の整備」というものがありました。行政らしい、仕組み化ですね。ここの部分は、引き続き調査していきます。次に2つ目は、「職員の育成機会」というところです。「協力隊とともに地域内や近隣町村と馴染み、職員として成長していくことが、協力隊のサポート力向上に繋がる。中堅手前の若手職員を協力隊担当に配属するのは、行政の人材育成の点でも効果的なのかもしれない」という趣旨のコメントがあるのですが、なるほどなと思いました。作家のマネージャーとして編集者が成長していく、まさに『編集王』の世界。ボクもその立場なら、「協力隊担当職員王」を目指す…ゾっ!

というような感じで、協力隊だったら、担当職員だったらと、仮定の話を2回にわたり続けましたが、わたしは現実のところは議員ですので、この協力隊制度および事業において、議員としてできることを引き続き模索していこうと思います。
 
 
horidot

編集者議員・堀直人
http://ebetsu2.net/

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