平成28年第2回定例会:一般質問
堀直人
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ただいま、議長より発言の許可をいただきましたので、通告に従い質問させていただきます。
今回の質問では、市民の生活の質を向上させる公立図書館についてお聞きしたいと思います。それでは、質問に入らせていただきたいと思います。
図書館とは何か。時代の転換期を迎え、そのことが問われています。公立図書館とは、行政が提供するものですから、市民生活の質を高めるためのもの。ということが、共通認識になるでしょう。しかし、わたしたちが求めている生活の質とは、時代の変化とともに大きく変わっていきます。ですから、「市民生活の質とは何か」ということを常に再定義しなければなりませんし、同時に図書館の評価方法についても再検討が必要になりますし、図書館が提供する価値や機能も再構築し続けなければなりません。江別市情報図書館が設置されたのは、平成元年。27年ものあいだが経過し、図書館が市民生活の質の向上に貢献する手法も大きく変わってきているものと思われます。さらには図書館というのはメディアであり、蔵書という手法により意図を持って未来を編集しております。そのことの意味を、そしてその装置を行政が保有することの意味を、こうした時代だからこそ重く受け止め、常にその重大さを明確にしている必要があります。行政が、図書館が通じて行なうべきミッションはなんなのか。そのことについて、情報化時代における図書館の存在意義を明らかにするという主旨を含め、10項目の質問をさせていただきます。
項目1、公立図書館のあり方についてです。根本的な図書館の目的というのは、図書館法第1条、この法律の目的にある、「国民の教育と文化の発展に寄与すること」であり、図書館法第2条、定義にある、第1項の「教養、調査研究、レクリエーシヨン等に資することを目的とする施設」と整理されるかと思います。この言葉たちが示すあり様が、時代の移ろいにより変化しているということです。次に、図書館に関する議論の変遷について見ていきます。1963年、日本図書館協会がまとめた『中小都市における公共図書館の運営』では、「公共図書館の本質的な機能は、資料を求めるあらゆる人々やグループに対し、効率的かつ無料で資料を提供するとともに、住民の資料要求を増大させるのが目的である」と規定。図書保存重視に代わる、貸出重視の理念が提起されました。1970年、日本図書館協会がまとめた『市民の図書館』では、3点の重点目標を挙げ、地方公共団体の役割を強調しました。時が経ち1988年になると、社会教育審議会社会教育施設分科会が『新しい時代(生涯学習・高度情報化の時代)に向けての公共図書館の在り方について』をまとめ、公共図書館を「生涯学習を進める上で最も基本的、かつ重要な施設」であると位置づけ、「ネットワーク化」が打ち出されました。21世紀に入った2001年になりますと、文部科学省が『公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準』を示し、さらに2005年には、文部科学省が『2005年の図書館像』において、電子図書館についての構想をまとめ、そして2006年、文部科学省の『これからの図書館像』では、「地域を支える情報拠点をめざして」という副題が付けられており、「インターネット等の電子情報へのアクセスを提供するとともに、電子情報を発信あるいは保存することもこれからの図書館の役割」ということや、「他のメディア提供手段(書店、マスコミ、インターネット)、社会教育施設に対して持つ特性を明らかにし、それを生かすサービス方法を考えることが必要」ということや、「あらゆる情報を一個所で提供しうる『ワンストップサービス』機関」であるということや、「図書館はすべての主題の資料を収集しているため、調査研究や課題解決に際して、どのような課題にも対応でき、どのような分野の人々にも役立つ」などの基本的あり方が示されるとともに、図書館政策を発展させる取組としては、5つの項目が提示されました。こうしたように、一つ図書館と言っても、時代の環境変化にともなうニーズの移ろいとともに、時々に異なる図書館のあり方が議論されております。そうしたなか、江別市の公立図書館のあり方は、今までどのように推移してきたのか。現在は、どのようなあり方としているのか。2006年に文部科学省が示した『これからの図書館像』をどう位置づけ、その国の方針と照らし合わせて、江別市の公立図書館の現状と役割をどのように捉えているのかをお聞かせください。
項目2、地域課題を解決する公立図書館をどのようにつくるかについてです。項目1で挙げたように、図書館は地域の課題を解決する能力を保持しており、故に地域課題解決機関としての機能が現在において求められています。人口減少時代という環境変化にともない、社会システムの転換が迫られていることから、むしろ図書館の重要性は高まっております。さらに図書館は、市民の課題を解決する施設である。そういう視座での情報提供が必要です。確かに、すぐに知りたい複雑ではない事柄。たとえば、「燃えるごみの日はいつ?」といった性質の課題は、インターネットの検索によって解決できる時代であり、行政としてはウェブサイトなどを通じて情報提供に努めていることかと思います。一方で継続的で複雑な事柄。たとえば、「江別市で起業したい」と考えたとき。金融機関の融資をどのようにしたら受けれるのか調べたい、そう考えたときには「第12次業種別審査事典」など有効な図書がありますが、個人で買うには高価すぎる図書が多いです。こういった図書が市民の共有財産として収集され整理されていれば、主体的に市民は自らのその課題を解決していくことができる。これからの図書館というのは、こうした市民の活動を支援するものでなければなりません。前述した市民の経済活動を支援するものとして「ビジネス支援図書館」ほか、「子育て支援図書館」や、「農業支援図書館」など全国には支援図書館と呼ばれるものが多くあります。そう考えると、「健康づくり支援図書館」があってもいいでしょうし、「まちづくり支援図書館」があってもいいかもしれません。仕事とくらしに役立つ、どういう支援図書館をつくるのかということ自体、江別市の魅力を向上させ、ひいてはシティプロモートにつながります。そうした観点から、江別市の公立図書館は、どのように地域課題の解決に関わっていくのか。市民による価値創出の「孵化器」として、創造性とアイデアと好奇心あふれる市民の要求に応え、市民の価値創出欲求を増大させ、新しい価値を生み出すためには惜しみない支援を行なうことが、図書館の地域課題解決における役割と考えますが、いかがでしょうか。お考えをお聞かせください。
項目3、行政施策を推進する公立図書館をどのようにつくるかについてです。行政が重点的に展開していく戦略と、図書館のあり方が一致する事例が多く見てとれるようになり久しいです。つまり図書館とは、地域の針路を指し示す「未来への羅針盤」であろうと言うことです。図書館を高度に活用することは、行政施策の推進につながりうるものであり、「江別市がどこに向かおうとするのか」ということが、図書館のあり方のなかでも問われます。千代田図書館では、「あなたのセカンドオフィスに。もうひとつの書斎に。」というコンセプトのもと、夜10時まで開館、約半分の閲覧席が電源と有線LANが利用できるデスクタイプといった土地柄にあった特色を打ち出すとともに、地域情報を積極的に発信し、観光振興にも寄与しております。「こういったまちでありたい、こういったまちになりたい」というのは、総合計画やそのなかでも重点的・集中的に取り組むとされるえべつ未来戦略を基礎に表現されるものと思いますが、こうした市の取組みを図書館がどのように支援し、地域の特色を図書館にどう反映し、地域の魅力を図書館からどう発信し、まちづくりの観点から政策的に図書館を運用していくお考えについてお伺いいたします。
項目4、協働のまちづくりを進めるための公立図書館の役割についてです。総合計画のなかで、江別市の将来都市像は「みんなでつくる未来のまち えべつ」と謳われ、えべつ未来戦略の戦略を推進するネットワークとして、「ともにつくる協働のまちづくり」という方向性が設定されているところかと思います。前述のとおり時代の要請としても市民に寄り添い、市民と一緒につくっていく図書館が求められることから、江別市の公立図書館としても多様な主体と協働し魅力的な図書館づくりを進めていく必要があります。とりわけ市民協働ということが、市民が身近に利用する施設である図書館には重要となるものです。そうしたなか、各地の市町村では、市民や市民活動団体に呼び掛け図書館ボランティアを組織しております。ステータスになるような図書館ボランティアを組織可能になれば、市民の図書館への思い入れも高まり、双方にとって良いものになります。文部科学省の『これからの図書館像:実践事例集』によると、北広島市図書館では、「北広島市図書館フィールドネット」という運営委員会方式の組織が結成されており、市の交付金と事業収入をもとに読書振興事業を主催しているそうで、従来型の施設ボランティアとしての図書館ボランティアではなく、主体的にサービスを展開してゆくボランティア組織として機能、こうした市民の図書館活性化への後押しがあったからこそ、北広島市図書館は先駆的と呼ばれる情報サービスへの挑戦に歩を進めることができたとされております。北広島市の人口1人当たりの年間図書貸出数8.7冊というのは、こうした取り組みと無縁ではなく、さらにこうした読書振興があることからこそ、ブックカフェが開業されたりなどの地域活性化にもつながっていることでしょう。最近の図書館は、「まちのリビング」であるというコンセプトのもと、「居心地」を追求する傾向にあり、市民とともに図書館づくりを進めるためには、こうした裾野を広げるためのさまざまな市民が多様に集りやすい空間づくりも必要になります。さらに、江別市内にはすでに読書振興活動や図書によるまちづくり活動を行なっている市民や市民活動団体が存在していることから、図書館内外でこうした市民や市民活動団体と連携することが欠かせないことになろうかと思います。以上のような、協働による図書館づくりを進めるための図書館ボランティアの結成、市民とともにつくる図書館活動が生まれやすくするための図書館機能、図書館による協働のまちづくりを可能にするための読書振興活動や図書によるまちづくり活動を行なう市民や市民活動団体との連携について、お考えをお聞かせください。
項目5、公立図書館の評価手法についてです。江別市の事務事業評価表においては、貸出利用者数と貸出冊数が主な評価指標となっておりますが、前段から整理しているように、これからの図書館の役割を踏まえると十分ではないことが考えられます。課題解決型図書館という意味では、そのまま「課題解決数」を指標にしたいものですが、具体的にはレファレンス対応件数、市民の課題解決支援のための図書案内件数、仕事とくらしに役立つ図書館主催事業回数、市民による図書を活用した地域課題解決活動の登録団体数および登録団体の取組回数などになろうかと思います。神奈川県立図書館では、活動評価における平成28年度の指標を、テーマによる資料展示回数、県民公開講座参加者数、職員の文献等執筆及び講師実績件数、ホームページコンテンツの新規作成件数、メディア掲載件数、電子ファイル資料登録件数とし、入館者数、図書等貸出点数は基礎的なデータとして取り、数値目標として掲げてはないそうです。これは神奈川県立図書館が平成13年から評価について試行錯誤した結果で、平成16年には来館者アンケートだけではなく、図書館に利用しない理由を含めた郵送および電子メールを利用したアンケートを実施。こうしたものは、江別市であれば「江別市まちづくり市民アンケート」のなかで代用できるかもしれません。平成17年には、利用者や県職員および県職員であった利用者にグループ・インタビューを行ない、指標策定を進めたそうです。参考になる事例ではないでしょうか。さらに指標を用いた評価だけではなく、生涯学習や図書館の専門家にスーパーバイザーを依頼し、評価をするという手法も考えられます。図書の貸出というのは目的ではなく、手段です。手段についての評価ではなく、成果についての評価が必要と考えますが、江別市においても今後の図書館のあり方を踏まえた、より適切な活動評価を模索してはどうかと考えますが、お考えを伺いいたします。
項目6、江別市情報図書館外の図書館機能の充実についてです。読書機会の均等という意味において、図書館より図書カードという論があります。しかしそれは非常に非効率な手法で、特に地域経営資源がますます限られてくる昨今においては、「図書のシェアリングサービス」ともいうべき図書館という手法を十分に活用し、地域の課題を解決するにふさわしい知の集積を進めていかなければなりません。一方で、働き世代にとって、なかなか利用しにくいのも図書館です。江別市情報図書館は、水曜日と木曜日を21時までの開館にするなど、働いている人にとっても利用しやすい努力はなされていると思いますが、立地からしても通勤している人にとっては距離感を感じられるものです。そうした状況は江別市だけではなく、世田谷区が複合施設に貸出と返却の業務のみ行なう、わずか50平方メートルの図書カウンターを設置したところ、図書館共通カードの登録者数が他の図書館平均の8倍に相当する約1600人にのぼり、利用者のニーズに応え、新しい利用者層を獲得する成果を上げたそうです。札幌市中央図書館の大通カウンターを利用されたことがある方もいらっしゃると思いますが、駅付近に図書カウンターを設置することで、普段は図書館を利用しない方へアプローチすることができます。さらに市内のさまざまな施設と連携し、読書空間をつくっていく手法があります。図書館の取り組みとしては、「お店の1つひとつが図書館で、店長1人ひとりが館長」というコンセプトのもと行なわれる「恵庭まちじゅう図書館」。民間の取り組みとしては、北海道ブックフェス実行委員会が2010年より行なっている「ミセナカ書店」が挙げられ、図書館の外に読書空間を拡張するだけでなく、まちあるきに彩りを与え、まちの回遊性を高め施設への来店動機をつくる効果もあります。こうした連携をさらに進め、図書館の蔵書の貸出と返却に協力していただけたなら、図書カウンターを設置しなくても、それにあたる機能を用意できることになります。このように、あらゆる生活のなかに図書館が位置づけされるように、多様な図書館へのアプローチを設計し、図書館のあるライフスタイルを市民に提案し、ひいては図書館による江別市の魅力向上に努めていくのが、図書館行政に求められる価値創出になるろうかと思いますが、江別市情報図書館内だけでなく、館外にある江別の読書環境の活性化に向けた可能性を総動員し、図書館をあらゆる市民にとって身近なものにすることへのお考えについてお聞かせください。
項目7、江別市情報図書館と他の図書館との連携による読書環境の整備についてです。図書館法第3条第4項には、「他の図書館、国立国会図書館、地方公共団体の議会に附置する図書室及び学校に附属する図書館又は図書室と緊密に連絡し、協力し、図書館資料の相互貸借を行うこと」とされております。今までは江別市の公立図書館である江別市情報図書館についての質問ではありましたが、江別市内には情報図書館のほかにも、学校図書館法第3条で設置が義務付けられている学校図書館、同じく地方自治法第100条第19項で設置が義務付けられている議会図書室、セラミックアートセンターなどの公共施設内にある図書室、北海道が設置している北海道立図書館、民間が設置している大学図書館や企業内図書室や個人宅にある私設図書館など、さまざまな図書館や図書館に類する施設がありますが、江別市内全体の読書環境をより充実したものへ整備していくという観点から、情報図書館と市が設置する他の図書館との連携、民間の図書館との連携、それぞれの連携について今度どのように推進し、どのような役割を果たしていくかについてお伺いします。
項目8、こども政策と公立図書館の関連についてです。ノーベル賞受賞労働経済学者ジェームズ・ヘックマン教授は、就学前教育が最も投資効果が高い。その理由は、その人がその人なりの成功を収めるにはケーパビリティー、すなわち潜在能力を高める必要があり、その潜在能力が形成されるのは幼少期であるからであると言います。1960年代にアメリカで行なわれた「ペリー就学前計画」によると、就学前教育を受けたこどもたちのあいだで顕著だったのが、学習意欲への伸びであったようです。自らで選び、調べ、知るという主体的な学びの場であり、市民だれもが利用できる図書館。その市民財産を活用し就学前教育を推進することは、その後の学習においてのこどもの潜在能力を高め、その人なりの成功を収める確率を押し上げます。深刻な貧困を解決し、江別で育ったこどもたちが江別に住み続け、地域にリターンをもたらしていく仕組み、これが就学前教育であり、その発展に図書館が果たせる役割は少なくないでしょう。図書館が就学前教育へ積極的に関わり、そうした教育を望む両親の子育てを支援し、とりわけ貧困を抱える家庭に投資することが、貧困の連鎖を断ち切り、江別市の地域経営にも寄与しうると考えますが、こどもの潜在能力を育む図書館ということについて、お考えをお聞かせください。
項目9、情報政策と公立図書館の関連についてです。現代の図書館は、便宜的にこのような語が当てはめられていますが、時代の情報化にともない、情報入手の手段は図書だけでなく、また館という物質的な拠点のみにとどまらなくなっております。ユネスコ公共図書館宣言においても、図書館は「利用者があらゆる種類の知識と情報をたやすく入手できるようにする、地域の情報センターである」と記され、いま求められている図書館は「市民の知の拠点」であると理解するのが妥当です。そういう意味では、図書に限らず、市民が情報を入手するために必要な手段を総合的に講じていくのが図書館の役割と言えます。図書館ナビというサイトを見ますと、北海道の図書館でWifiが使用できる図書館は、近隣の恵庭市、石狩市、北広島市、栗山町などの8図書館でありますが、このように図書館でWi-Fiが解放され、インターネットに接続でき、その使い方を支援する環境があるとしたら。たとえば、Amazonで買い物をする。これは都市の若者の消費行動のように思われますが、むしろ買い物難民と言われる過疎地域の高齢者にこそ役立つものであり、既存サービスを活用して地域課題を解決できる機能になりえます。さらに近年のITを活用したCtoCというトレンドを把握し、これを情報のシェアリングサービス機関たる図書館がどう活用できるのかというアンテナを常に立て、こうした機能を最大限活用しうるようにコーディネートを行なうことも、これからの図書館の役割となるでしょう。情報化時代と言われて久しいですが、もはやIT化を避けて通ることはできません。図書館と地域をむすぶ協議会のウェブサイトを見ますと、幕別町図書館ではシステム改修を契機に、「図書館を地域の情報編集センターにする」というコンセプトのもと、「地域づくりの核になる図書館」として、地元書店や福祉施設と連携し、地域課題の解決を進めているそうです。そのほかにも、電子図書館の機能を混在させたハイブリッド図書館などの事例があり、江別市においても先行事例を参考に、IT化を推進していただきたいところです。江別市情報図書館のウェブサイトには、「私たちは訪れる人にいろんな形の『情報』を提供できるようにといつも考えています。図書館は情報の公園です。どうぞお好みのスタイルでくつろいでください」と書かれております。わたしは、この文章に心から共感するものです。設立当時のハードに依拠したマルチメディアとしての情報媒体ではなく、現代は「情報」そのものの集積、そしてそれによるコンテクスト、つまり編集された情報同士の関係や状況の提供に移りつつあります。そうした情報という言葉が取り巻く時代の要請の変遷を押さえながら、「情報」と名の付く江別市の公立図書館が考える情報の定義、その情報を受発信するための施設整備、それらを踏まえつつ市の情報政策における江別市情報図書館の位置づけを示しながら、地域の情報センターとして公立図書館が担うべき機能についてお答えいただきたいと思います。
項目10、公共施設に対する市の考え方についてです。今までは図書館という公共施設についての質問でしたが、最後に市が設置している公共施設全般についてお伺いします。公共施設の整備手法も多様にあるようで、そのなかで先行事例を一つ挙げますと、富山県氷見市では「廃校になった学校の体育館を市役所として使う」という手法で公共施設を整備しました。日本初の体育館リノベーション市庁舎ということでメディアに報道され、観光スポットにもなり、公共施設の整備ひとつとってもまちのPRができることを示しました。この整備手法によると、工事費が29億6千万円から11億1千万円になるという大幅な事業費削減になり、耐震化や木質化の補助を受けたことで市の負担を減らすことができたそうです。さらに参考になると感じたのは、庁舎づくりへの意見を取り入れる市民ワークショップを職員が自ら運営し、この整備案は他の6案と比較検討した末に採用されたため、「フューチャーセンター庁舎」と呼ばれていることです。まさに公共施設、特にみんなが集まる市庁舎で「みんなでつくる未来のまち」を体現した事例です。前段では図書館のあり方やそのためにすべきことを整理しましたが、あらゆる公共施設も同じく、市民生活の質を高めるためのものであり、そのための地域課題を解決し、そのための行政施策を推進するものかと思います。図書館以外の公共施設に関しても、全国の先行事例を研究しながら、住みたくなる江別の判断材料の一つになる、公共施設がシティプロモートの題材になる、協働のまちづくりを体現する、そしてそのことが人口減少対策になるということが、これからの時代の公共施設に必要な観点になると考えますが、市の考え方についてお聞かせください。
以上、市民の生活の質を向上させる公立図書館についての質問でした。これをもって、私からの1回目の質問とさせていただきます。
三好昇市長
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堀議員の一般質問にお答え申し上げます。私からは、公立図書館に関連する質問のうち、公共施設に対する市の考え方についてお答え申し上げたいと思います。
公共施設は、法令で設置目的が定められており、住民サービス向上を図るためのものである一方、市民の生活の質を高め、さまざまな地域課題を解決するための側面もございます。市では、公共施設の設置に当たりましては、これまでも、地元の協議会などからの要望や説明会などでの意見を取り入れ、多目的な利用ができるよう努めてきたところであります。具体的に申し上げますと、江別小学校と江別第三小学校を統合する際には、保護者や地域の住民の方などで構成された江別小学校・江別第三小学校統合委員会などの検討組織を設け、統合校の開校に必要な事項等についてさまざまな意見を伺い、統合された江別第一小学校には、放課後児童クラブを併設するなどとしたところでございます。同様の考え方のもと、江別太小学校の改築時には、地域に開放された音楽室や図書室を、江別第一中学校の改築時には、多目的ホールをそれぞれ設置したところでございます。また、地域の住民の皆様の意見を踏まえ、白樺保育園と若草乳児保育園を統合する際には、地域の自治会も使用できる会議室を、新栄団地集会所の改築時には、多世代交流スペースをそれぞれ設置いたしました。
さらに、都市と農村の交流拠点施設の新設に当たりましては、食と農により学びと活力を生み出す新たな体験・交流拠点という施設の基本理念を定める段階から、地元や都市部住民の方、市内農業者、農協、農業委員会などと協議を重ね、この理念を具現化するため、多用途に使用できる研修室や調理室、農業者による6次化の産業の推進を図るテストキッチンを設置することとしたところであります。これらのほか、市民参加による公園づくり事業としまして、地域の住民や子供たちから意見を伺いながら再整備した街区公園や、保護者からの意見を受け、市内の商業施設内に設置いたしました子育てひろばぽこあぽこなどの施設につきましては、意見を取り入れたことにより、利用しやすいとのお声をいただいているところであります。いずれにいたしましても、市といたしましては、市民の生活の質を向上させる公共施設の存在は、定住の促進や協働のまちづくりの推進などのためにも重要な意味を持つものであると考えておりますことから、今後におきましても、公共施設に対するニーズの把握や他市町村の事例研究などを行いまして、多くの方に多様な目的で利用していただけるよう努めてまいりたいと考えております。
私からの答弁は以上でございますが、このほかの質問につきましては、教育長ほかをもってお答え申し上げます。
月田健二教育長
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私から、市民の生活の質を向上させる公立図書館についてのうち、公立図書館のあり方について御答弁申し上げます。
公立図書館は、図書館法において、社会教育法の精神に基づき、国民の教育・文化の発展に寄与する施設として位置づけられております。江別市情報図書館は、情報ネットワーク化の地域の拠点として、平成元年の施設設置以来、本館を初めとして、江別地区及び大麻地区に分館を設置し、多くの市民の皆さんに御利用いただいております。近年は、社会情勢の変化とともに地域の課題やニーズも変化し、図書館は地域の情報拠点としての役割を担うことや、地域の課題に対応したサービスの充実に努めるなど、図書館に対する国の新しい考え方が示されているところでありますが、情報図書館は、これまでも地域の情報拠点としての役割を担ってきており、子育て支援のためのサービスや、利用者の相談に応じて資料の情報の提示等を行うレファレンス機能の充実に努めてきたところであります。教育委員会といたしましては、引き続き、市民の社会参加や生涯学習のための活動を支援するとともに、子供たちの感性や情操を育み、学力向上にも資する読書活動を普及するなど、公立図書館としての役割を果たしてまいりたいと考えております。私からは以上でありますが、引き続き、教育部長より答弁いたします。
渡部丈司教育部長
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私からは、地域課題を解決する公立図書館をどのようにつくるかについてほか7件について御答弁申し上げます。
国は、図書館の設置及び運営上の望ましい基準の中で、公立図書館においては、地域の課題解決に向けた情報の整備や提供に努めることを目的の一つとして掲げております。御質問にありました、ビジネス支援や子育て支援などを標榜する支援図書館は、特化した目的の書籍や資料だけを専門的に備えた施設もありますが、公立図書館のほとんどは、特定分野の書籍や資料を特設のコーナーに集めて、利用に供しているとのことであります。教育委員会といたしましては、これまでもテーマに沿った書籍をまとめて展示するなど、他市の支援図書館と類似のサービスを提供してきたところであり、今後におきましても、利用者のニーズに合わせて、ビジネスや子育て、学校教育、園芸など、日常生活を送る上での有用な資料や情報を提供していくため、こうした特設コーナーの企画内容を工夫してまいりたいと考えております。
次に、行政施策を推進する公立図書館についてでありますが、えべつ未来づくりビジョンにおきましては、子育て・教育、生涯学習・文化の分野で子供の教育と生涯学習の充実を掲げており、個別計画の子どもの読書活動推進計画や社会教育総合計画の中では、その中心的施設として、情報図書館が位置づけられております。情報図書館の取り組みの一例を挙げますと、子供の教育の充実に向けた取り組みとしては、読書活動の推進に向けた絵本の読み聞かせなどの開催や、学校図書館の環境整備のための支援などを実施しており、生涯学習の充実に向けた取り組みとしては、親子向けのお話し会や、時々のテーマに応じた企画展や講座の開催など、家庭や地域における生涯学習環境づくりへの支援や、幅広い年齢層に応じた学習機会を提供しております。また、江別市や北海道に関する地域資料の特設コーナーを設け、多様な行政及び郷土に関する資料を一元的に整備しております。教育委員会といたしましては、今後も、えべつ未来づくりビジョンやえべつ未来戦略の円滑な推進に資するよう、図書館機能の充実を図ってまいりたいと考えております。
次に、協働のまちづくりを進めるための公立図書館の役割についてでありますが、現在、情報図書館におきましては、ボランティア団体による障がい者のための点訳や、朗読奉仕、CDへの吹き込みの活動のほか、情報図書館が行うお話し会やパソコン教室の活動に、ボランティアスタッフの御協力をいただいております。教育委員会といたしましては、今後も、こうしたボランティア団体の活動に必要なスペースの提供に配慮するほか、事業の開催に当たっては、こうした関係団体との連携を強化しながら、図書館サービスの充実につなげてまいりたいと考えております。
次に、公立図書館の評価手法についてでありますが、現在、図書館の評価に当たっては、市の事務事業評価において、評価指標に図書の利用者数や貸し出し数のほか、展示会入場者数、パソコン教室受講者数などを採用しており、社会教育委員の会議等においては、学識経験者などから事業運営についての御意見や評価をいただいております。今後、事務事業の評価に際しては、利用者の満足度を高めていくため、利用者アンケートの項目を工夫するほか、レファレンスサービス件数など、さまざまな評価指標を参考にしながら、引き続き、研究してまいりたいと考えております。
次に、江別市情報図書館外の図書館機能の充実についてでありますが、現在、市内では5カ所で図書館サービスを提供しており、そのうち2カ所は学校図書館の地域開放事業として御利用いただいているところでございます。情報図書館におきましては、開館当初から、多くの市民が利用しやすいよう配慮し、本館及び江別、大麻の分館をJR駅に近接した場所に配置したほか、本館の開館時間を週に2日は午後9時までとしております。また、これまでも市民の要望を聞きながら、インターネット予約サービスを順次拡充するなど、学生や就業されている方が利用しやすくなるようなサービスの充実に努めてまいりました。御質問の図書館を市民にとって身近なものとすることについてでありますが、教育委員会といたしましては、他市町村における事例を参考としながら、利用者の視点に立ったサービスの向上に努めてまいりたいと考えております。
次に、江別市情報図書館と他の図書館との連携による読書環境の整備についてでありますが、市内には北海道立図書館を初め、四つの大学や小・中学校などに図書館があり、それぞれの目的や対象者に応じたサービスの提供、運営がなされております。情報図書館におきましては、開館当初から国立国会図書館を初め、全国の公立図書館及び市内各大学図書館と資料の相互貸借を行っており、さらに平成17年度からは、道内図書館の資料横断検索システムが整備されたことにより、より迅速な資料の検索・提供が可能となっております。このほか、北海道立図書館が所蔵する資料の貸し出し窓口を代行しているところでもあります。また、学校図書館との連携につきましては、情報図書館から3人の司書を各小・中学校を巡回する形で派遣しており、選書を初めとする図書環境整備に加え、教科に応じた資料目録の作成や、教員が授業で使う教材集めの補助、児童生徒の調べ学習へのアドバイスなど、さまざまな形で支援を行っております。今後におきましても、道立図書館を初め、他の図書館との連携を深める中で、利用者が一層満足できる読書環境となるよう努めてまいりたいと考えております。
次に、子供政策と公立図書館の関連についてでありますが、教育委員会では、江別市子どもの読書活動推進計画に基づき、絵本などによる読み聞かせ、学校図書館の利活用など、子供の教育の充実に向けた取り組みを行っており、情報図書館では、貸し出しカウンターを挟んでエリアを区分し、ゆっくり読み聞かせができるおはなしコーナーを設け、小さなお子さん向けの絵本や育児書もそろえるなど、子育て世代の親子が利用しやすい環境も整えております。また、子供の遊びの場、子育て世代の交流・情報交換の場として開設いたしました子育てひろばぽこあぽこには、情報図書館で選書した絵本等を設置し、多数の方に御利用いただいております。さらに各館では、毎週、絵本の読み聞かせやお話し会を開催しているほか、保健センターで実施する4カ月児健診時には、職員を派遣し、同じく読み聞かせを行うなど、多くの子育て世代の親子に楽しんでいただいております。教育委員会といたしましては、子育て政策の充実に向けて、子供が言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身につけていくことができるよう、図書の整備や読み聞かせなどを通じて、今後とも子育て世代を支援してまいりたいと考えております。
次に、情報政策と公立図書館の関連についてでありますが、江別市情報図書館におきましては、開館以来、生涯学習への関心の高まりや高度情報化が進展する中で、市民が必要とする情報を的確に提供できるよう身近な情報拠点としての役割を果たしてまいりました。近年は、情報通信技術の進展とも相まって、多様な情報がふえ続けており、市民の知的欲求は一層高くなっているものと考えます。これまで、情報図書館におきましては、一般図書のみならず、参考資料や地域資料、逐次刊行物といった専門性や鮮度の高い情報を含む資料を広く収集し、提供するとともに、利用者と情報をつなぐ司書の養成にも継続的に取り組むなど、情報センターとしての機能の充実も図ってきたところであります。教育委員会といたしましては、今後も行政サービスの情報化に合わせ、図書館サービスにおける情報の入手、集積及び提供などの環境整備について研究し、利用者のニーズを常に意識しながら検討してまいりたいと考えております。以上であります。
堀直人
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それでは2回目に関しましては、1点の質問と1点の要望としましてお話しさせていただきたいと思います。
まず、9項目めの情報政策と公立図書館の関連について再質問をさせていただきます。最初の質問のときに、情報と名のつく江別市の公立図書館が考える情報という言葉の定義とその情報を受発信するための施設整備、それらを踏まえつつ、市の情報政策における江別市情報図書館の位置づけを示しながら、地域の情報センターとして公立図書館が担うべき機能はという質問をさせていただきましたが、公立図書館のあり方というところも含めまして、情報という言葉の定義というのが、先ほどの質問で申しましたように、時代とともに変遷していることですから、情報という言葉をどのように捉えているかということが江別市情報図書館のあり方についてもすごくかかわるものですから、情報という言葉の定義について再質問させていただきたいと思います。
次に、要望についてですが、江別市情報図書館は高齢の利用者がふえていても、若年の利用者が減少しているとのことですので、インターネットの隆盛や活字離れ、あるいは人口減少が世間では言われていますが、それでは若年利用者が伸びているほかのところの説明ができません。若年層のライフスタイルを踏まえてマーケティングをする、若年層の情報接触がしやすいようにSNSを利用する、他の利用者が発する音が気にならないよう音楽をかける、すばらしい取り組みは知られなければ伝わらないので、積極的に取り組みをPRするなど、図書館が主体的に小さな工夫を積み上げながら多様な市民が主体的に触れ合える、そして、市民が誇りに思い、自慢できる江別市の公立図書館として、さらなる江別市情報図書館の発展を期待して、これを要望させていただきます。
以上、1点の質問と1点の要望でした。
渡部丈司教育部長
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堀議員の再質問に御答弁申し上げます。
情報の定義についての御質問でありますが、情報というものは、市民の多様な要望に対応できる図書館資料全般を指すものと考えております。具体的には、電子情報などあらゆる媒体の資料と考えており、そこに所蔵される文書、図書など、それら全てを含むものだと考えております。以上であります。
※この全文は、音声等をもとに起こしたものです。